top of page

お知らせ

2024年10月27日 日本ポルトガル・ブラジル学会 研究発表大会および総会




今年度の日本ポルトガル・ブラジル学会の研究発表大会および総会を以下の要領で開催します。会員の皆様のご参加をお待ちしております。


日時:

2024年10月27日(日)

12時30分 受付開始

13時~18時(予定) 研究発表・総会


会場:

東京外国語大学 留学生日本語教育センター さくらホール

 


 

2024年日本ポルトガル・ブラジル学会(AJELB)大会プログラム

(O Colóquio e a Assembleia Geral da AJELB de 2024)



会場 (Local):

東京外国語大学 留学生日本語教育センター さくらホール


日時 (Data):

2024年 10月 27日(日)13時00分~


13:00~13:30

総会



― 研究発表 ―


13:40∼14:10

「カーネーション革命50周年 今日的視点からどう見るか」


横田正顕(東北大学法学研究科)


【要旨】

ポルトガルは今年でカーネーション革命の50周年を迎え、将校団が決起した4月25日を中心に様々な式典が執り行われた。例年この式典への対応を巡っては党派による温度差が見られてきたが、革命に対する関心は、近年高まりこそすれ一向に風化する気配がない。この報告では、すでに革命を知らない世代が人口の大半となった今日、革命の意義がどう理解され、評価されるかについて考えてみたい。その際の論点はいくつかある。第1に、当初混乱と対立を生んだ革命が、最終的には西欧型民主主義に至ったことをどう見るか。第2に、ポルトガルのヨーロッパ回帰は革命期の左派的影響を部分的に否定する形で実現された。革命はその障害だったと見るべきか否か。第3に、リーマンショック以降の南欧諸国の混乱の中でポルトガルの民主主義が比較的安定している事実と、カーネーション革命の経験とは関係しているのかどうか。第4に、近年躍進著しい極右政党Chegaは革命の遺産をどう見ており、それは世論にどう反響しているのか。これらを通じて、カーネーション革命の現代的意義について再考する。


14:20∼14:50

「新国家への忠誠と反逆:エンリケ・ガルヴァン(Henrique Galvão)の両義性ーー1930年代の活動を中心に」


李悦(東北大学法学研究科博士後期課程)


【要旨】

本発表は、20世紀最長の独裁政権であるポルトガルのサラザール体制におけるエンリケ・ガルヴァン(1895-1970)の多面的な役割に焦点を当てる。1961年の「サンタ・マリア号」ハイジャック事件で反体制派として広く知られるガルヴァンだが、1930年代には政権支持者として、演説や雑誌編集、博覧会の開催など、サラザール政権を支えるプロパガンダ活動に積極的に関わっていた。この時期の彼の活動は十分に研究されておらず、彼の人物像は一面的に理解されることが多い。

本発表では、ガルヴァンの文学作品に注目した先行研究とは異なり、サラザール体制の基盤を築いた1933年憲法における彼の役割に焦点を当てる。特に、ガルヴァンが編集した書籍や雑誌などの一次資料に加え、伝記や先行研究を活用し、彼の貢献を多角的に分析することで、ガルヴァンの「政権支持者」と「反体制派」としての二面性に迫る。本研究により、ガルヴァンとサラザール政権の複雑な関係を再評価し、独裁政権の強靭性に対する新たな視点を提示することを目指す。


15:00∼15:30

「パウロ・オノーリオは日本語で語れるのか―グラシリアノ・ハーモス著『サンベルナルド』の試訳から」


岐部雅之(京都外国語大学)

フェリッペ・モッタ(京都外国語大学)


【要旨】

ブラジル文学を代表する作家グラシリアノ・ハーモス(Graciliano Ramos: 1892-1953)の作品は、推敲を重ね上げた装飾のない文体で知られているが、同国北東部地方に固有の要素(人間や風土、言葉など文化全般)がふんだんに盛り込まれているために外国語への翻訳は容易ではないと言われる。とはいえ、英語やドイツ語版のほか、日本語訳については最大のベストセラー小説『乾いた人びと』(高橋都彦訳、水声社、2022年)がすでに存在する(同書の訳者あとがきによると、あとは短篇「泥棒」があるのみ)。本発表で取り上げる小説『サンベルナルド(São Bernardo)』(1934年)の語り手パウロ・オノーリオは貧困層から農園主まで登り詰めた男で、地の文にしても直接話法にしても地方的な言い回し(Regionalismo)に溢れている。そのため、この登場人物の言葉を日本語に翻訳するにあたっては地方出身で、無教養な、野心深い50歳の男のキャラクターに配慮しなければならない。パウロ・オノーリオが日本語で語れるのかということについて、「役割語」の概念を援用しつつ、冒頭4章の試訳から人称代名詞や文末表現などを検討する。


15:40∼16:10

「モザンビーク南部における産業技術の流入経路―マトラ市の溶接技術を事例に」


畔柳理(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)


【要旨】

都市部での人口が増加しているモザンビークでは、国内の消費者に向けて製品を生産・販売する地場の零細企業が出現しており、その中には工業分野で利用される産業技術を用いる企業も存在する。これらの零細企業で就労する多くの職人が徒弟制によって技術を習得することが明らかになっているものの、企業で用いられる産業技術の流入経路については、不明な点が多い。

本報告では、近年都市部で増加傾向にある「鉄工所(Serralharia)」と呼ばれる、溶接技術を用いて建具などを生産する業態に焦点を当て、2024年に南部のマトラ市で実施した調査結果をもとに、鉄工所で用いられる技術の流入経路を検討する。

調査の結果、鉄工所で用いられる技術は、植民地期にモザンビークへ進出してきたポルトガル系企業に端を発しており、それ以降も、主に、アパルトヘイト撤廃後にモザンビーク移民を受け入れた南アフリカの企業、MOZALをはじめとする2000年代にモザンビークに進出してきた外資系企業から継続的に流入していることが確認された。

零細企業は地域の需要に基づいて自然発生的に出現しているものの、技術の流入については、モザンビーク南部特有の政治・経済事情と結びついている様子が示唆された。


16:20∼16:50

「アンゴラ引揚者のアイデンティティの所在—ドゥルセ・マリア・カルドーゾの小説『帰還』をめぐって」


上田寿美(京都外国語大学)


【要旨】

本発表では、ドゥルセ・マリア・カルドーゾDulce Maria Cardosoの小説『帰還』(O Retorno, 2011)におけるアンゴラ引揚者のアイデンティティの揺らぎに表される宗主国ポルトガルとしての表象の崩壊に焦点を当てる。この物語では、1974年のカーネーション革命後の植民地アンゴラの独立に伴い、本国ポルトガルへの帰国を余儀なくさせられたアンゴラ生まれのポルトガル人の主人公ルイの目を通して、本国への突然の帰国と混乱に見舞われた引揚者の苦悩が描かれている。作品では引揚者、本国のポルトガル人、アンゴラ原住民の黒人という3つの社会集団をめぐり、それぞれの立場の違いが浮き彫りにされている。物語ではそうした立場の違いから生じる引揚者の複雑な心境の変化が、主人公の用いるキンブンド語で巧みに表現される。本発表ではポストコロニアル研究の観点から、これらの言葉に表出する主人公の心境と、アイデンティティの再構築に伴い修正される「想像上の中心としての帝国」ポルトガル像について考察を試みる。


17:00∼17:30

「ポルトガル語の接続法 –– シラバスにおける位置付け」


ペドロ・アイレス(京都外国語大学)

彌永史郎(京都外国語大学)

鳥越慎太郎(大阪大学)


【要旨】

ポルトガル語教育において、接続法は単文で用いられる限られた用法以外は、直説法の後に導入されるのが普通である。特に複文の目的節内における接続法の用法は、意味論的に一義的に説明しがたい複雑な様相を呈しているため難易度が高いと考えられている。母語話者の直観的判断を、外国語学習者は規則として記憶して使用せねばならないが、その規則自体を明瞭に提示しがたい面がある。本発表では、接続法の用法がポルトガル語と近いスペイン語における先行研究を中心に意味論的な解釈の試みをまとめ、コーパスより記述されうる規則、またこれらの規則をCEFRの水準との対応上、日本のポルトガル語教育でいかに扱うべきか、望ましい形を模索し、同学の諸氏のご批判を仰ぎたい。





bottom of page